持続力と多動力とジャーマンプログレッシブロック

先日、ミュージシャンのホルガー・シューカイ氏が、79歳で亡くなられました。ホルガー・シューカイ氏は、伝説的なジャーマンプログレッシブロックバンド、CANのベーシストとして、1979年までバンドに在籍されていたのですが、CANで活動していた当時からレコーディングスタジオとして活用していたという、彼の自宅で亡くなられていたそうです(ご冥福をお祈りします)。

ホルガー氏は、30年以上さまざまな作品を製作し、数え切れないミュージシャンとのコラボレーションの中で、音楽性の幅は広がる一方で、表面的には非常にあわただしく変わっていったようにも見えるアーティストだったのですが、根底に流れるテイストは、CAN在籍時となんら変わることはなかったと、少なくとも私には感じられました。氏が持続的に発信し続け、私が影響を受け続けた「何か」の正体とは、なんだったんでしょうか。

パンクとジャーマンプログレッシブロック

ホルガー氏の在籍していたCANに最初に出会ったのは、もうかれこれ30年以上前でしたが、鮮明に記憶しています。初めて買った彼らのアルバムは2枚組のベストで、タイトルが「カニバリズム(人喰い、共喰いの意味)」だったので、当時日本で起こっていたホラー映画ブームの世相と相まって、妙な存在感や普遍性を感じたものでした。ドイツから遠く離れた日本のいちリスナーだった私は、その後30年以上に渡って、CANやホルガー・シューカイ氏、そして彼らの作品を通して広がっていった、さまざまな国のさまざまなジャンルのアーティストの作品に、触れ続けることになります。

CANは1960年代に結成されたドイツのバンドなのですが、当時のドイツのみならず、欧米のバンドとしては非常に珍しく、初代ボーカルが黒人、二代目は日本人でした。音楽性もユニークで、単にロックとかプログレとかいうジャンルでは括りにくく、クラシック、ジャズ、プログレ、環境音楽、映画のサントラ、ラジオ音声やオーバーダビングなどを取り入れた実験音楽など、彼らの登場より後にイギリス初で世界的に広まったパンク的なアプローチ、つまり「何でもありで、特定のジャンルに留まることのないアプローチ」をも感じ取ることができるものでした。彼らはグルグルやノイ、ファウストといった同時代のドイツのアーティストらと共に、「ジャーマンプログレッシブロック」というジャンルで括られることが多かったのですが、どのユニットも、アメリカやイギリスのいわゆるプログレとは全く異なるテイストを持っていました。

CANの二代目ボーカルのダモ鈴木氏は、いまも精力的にアーティスト活動を継続していて、世代や性別、国籍を問わないセッションが止まる気配はありません。ホルガー氏やダモ氏の活動からは、彼ら自身の人間的なエネルギーを感じるだけではなく、数十年後の日本の音楽シーンにも影響を与え続けている、CANというユニットの、アーティストとしてのDNAの偉大さ、さらには時代を超えた普遍性をも感じ取ることができます。

持続力と多動力が与える影響

私は音楽を楽しむ際、いつもミュージシャン自身の思いや葛藤など、背景にある人間的な面も一緒に感じるのが好きで、ライナーノーツや歌詞を読んだり、アルバムジャケットを眺めたりしながら作品に触れるのですが、そうする度に、さまざまな妄想が浮かんできます。彼らの作品とこの妄想が、こんにちの私の思考や判断基準を継続的に構築してきた、と言っても過言ではありません。そのように考える根拠といいますか、根っこにある概念が、「持続力」と「他動力」といった人間力ではないでしょうか。

あるアーティストや、とある領域の専門家が、当人が確信している何か、いわば「芯」のようなものをぶらさず、ある種の信念を持って発信を続けるという「持続力」や、他ジャンルのミュージシャンとのコラボレーションにおいて、ロックのみならず、クラシックやジャズや環境音楽、映画の世界にまで踏み込んでいったり、音楽のみならず、趣味や仕事、子育て、学問など、広く社会的な活動にも精力的に参加していったりするという「多動力」を発揮することで、確実に他者へ「何か」が伝わり、他者の「持続力」や「多動力」をも作り出していく、と確信しています(ホルガー氏をはじめとしたアーティストについては、リスナーとして作品に触れることしかできませんが、アーティストも人間としての生活者である以上、作品製作に実生活に、マルチに精力的に活動していたことでしょう)。

こうして考えてみると、結局のところ、なんやかんやと理屈で積み上げるよりも、持続力と他動力を持って、好きなことや興味のあることをこつこつ続けることで、個人的には内部的にも対外的にもやや閉塞状態である今よりも、事態が好転していくような気が、しないでもありません。このへんの感覚が可視化できれば、つまり「これが人間力」、といった確信も、持てるようになるのかもしれません。

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